明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む
第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事
まず、難産です。難産とは陣痛があってもお産が進まないことです。子宮口(子宮の出口)がなかなか開かなかったり、赤ちゃんが降りてこなかったりする場合です。そんな経過中、赤ちゃんの心拍数などから、低酸素状態を心配して帝王切開となることもあります。

さらに、今日では逆子、すなわち骨盤位も帝王切開の大きな理由です。骨盤位の発生率は全体の6%程度です。骨盤位分娩は、通常の頭位分娩に比べ、リスクが高いとされます。なぜなら、赤ちゃんの身体のうちで一番大きな頭が最後に娩出されるためです。

東京都の主要病院の分娩統計では、初産、経産を問わず、骨盤位の約70%が、分娩を試みることなく予定帝王切開となっています。これに分娩中に緊急帝王切開に切りかえるケースも加えると、おそらく80%以上、全分娩のうち5%近くがこの理由で帝王切開分娩になると考えられます。

このほかに忘れてはならない帝王切開の大きな理由は、前回の帝王切開分娩を理由とする帝王切開です。帝王切開のために子宮を切り開くと傷ができます。もちろん、きちんと縫合するわけですが、次のお産のとき、この傷から子宮が破裂することがあります。子宮破裂のリスクは1%程度とされますが、いったん破裂してしまうと、赤ちゃんの救命はおろか、母体の命さえ危ぶまれます。また母体救命のため、子宮を全摘せざるをえないこともあります。こうなると、もはや次の妊娠ものぞめません。

そういうわけで、破裂の可能性が低いけれど、その結果は非常に深刻なので、あらかじめ帝王切開しておくことがほとんどです。これを反復帝切といいます。
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