明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む
第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事
現在、この国の帝王切開率は、施設にもよりますが、平均して15%から20%といったところでしょう。リスクの高い妊婦さんの多い施設などでは、40%に達するところもあると聞きます。

ひるがえって昭和10年代、たとえば都内有数の分娩数を誇った日赤産院(現在の日赤医療センター)の帝王切開率はわずか1%でした。また最近でも、私のお産の師匠、愛知県岡崎市の吉村正先生率いる吉村医院、吉村先生の盟友である堀尾仁先生率いる愛知県安城市安城堀尾病院では、年間数百近いお産を1%前後という低い帝王切開率でお世話しておられました。

帝王切開率が施設によってこれほどまでに異なるという事実は、どのように理解されるべきでしょうか。施設ごとに来院する妊婦さんたちのリスクの度合いに若干の差があるとはいえ、それだけでこれほどの差は出るはずがありません。

これは施設ごとに帝王切開をする基準が異なる、と解釈するのが正しいと思われます。帝王切開は医療行為です。そして医療が科学に基づいて行われているならば、ある一定の医療水準のもとで、帝王切開の基準は一律であるはずです。けれども、そうではないらしいことを、数字が示しています。

帝王切開術は産科医にとって伝家の宝刀ともいうべき最後の手段です。産科医が自分の力だけを頼みに赤ん坊を取り出そうとすれば、帝王切開しか方法はありません。
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