明日香医院
大野明子の著作など エッセイ > いのちを産む
いのちを産む
第1回 小さなお産の家
第2回 お産の姿勢
第3回 分娩台はいらない
第4回 起きあがって産む
第5回 200人の赤ちゃん
第6回 お腹を切らずに産む
第7回 帝王切開の理由
第8回 安産法
第9回 自然分娩へのプロセス
第10回 破水と誘発
第11回 陣痛誘発
第12回 サンタさんの贈りもの
第13回 妊婦と旅行
第14回 妊婦の御法度?
第15回 陣痛促進
第16回 お産とお風呂
第17回 産めるのかしら
第18回 不安の解消法
第19回 おっぱいの不思議
第20回 助産婦の仕事
第21回 産科医の仕事
ところで、「おっぱいが足らない」とか、「おっぱいが出ない」とかは、よく耳にする話です。ほ乳類であるヒトの赤ちゃんがおっぱいで育つのは、あたりまえのはずです。本当に「出ない」、「足らない」なんてことがあるのでしょうか。

1995年の厚生省(当時)の調査によれば、1カ月健診時の母乳率の全国平均は46.5%とのことです。当院では99%と、ほとんどのかたがおっぱいだけで赤ちゃんを育てています。この違いはなぜでしょう。

理由は、お産後のケアと、お母さんの母乳哺育に対する意欲の差です。具体的には、◇可能な限りの自然なお産の結果、母体の損傷が少ない◇当院の産婦さんたちは、おっぱいで育てることを強く願う人がほとんど◇母子は同室同床、片時も離れず、赤ちゃんが泣くたび、乳首を吸わせる◇授乳のコツをつかむまで、授乳のたび、昼夜を問わず助産婦スタッフがお手伝いする。吸いつきにくい乳頭や、吸いつくのが下手な赤ちゃんの場合、この根比べが決定的に重要◇必要があって糖水やミルクを足す場合も、最低量、最短期間だけ。このとき、ほ乳瓶を使わず、スプーンを使う◇退院後も必要なら、こまめに乳房マッサージなどのケアをする─などがあります。

こういったプロセスを踏めば、妊娠できた人のほとんどが経膣的に産めると同様、お産をした人のほとんどはおっぱいで育てることができます。ときに、このプロセスはやさしいことではありませんが、努力に値することだと思います。
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