明日香医院
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予防接種の話
第1回 予防接種を受けた方がいいですか
第2回 麻疹(はしか)
第3回 インフルエンザ
第4回 水痘
第5回 風疹(1)
これらの合併症の結果として、麻疹にかかった人のうち、1万人に1人の割合で死亡します。わが国では現在も年間約50人の子がはしかで命を落としています。これは、非常に多い数字と考えていいと思います。こんなに亡くなってもそれは自然なことだからやむをえないと言うのであれば、それは根本的な哲学の問題になります。

予防接種では、重い合併症はほとんどみられません。麻疹のワクチンは弱毒ワクチンですから、接種すると体内でウイルスが増殖します。そのため、接種後1週間程度で、約20%の人に、発熱や発疹など軽い麻疹に似た症状が出ます。通常は1〜2日で消失します。まれに熱性けいれんを起こす子どももいます。さらに、100万人に1人程度の、ごくまれな頻度で、脳炎の発生も報告されています。ただし、重要なことは、自然罹患に比べて脳炎の頻度は500〜300分の1に減少するということです。

実際に麻疹に罹患し、合併症を併発したとき、根治療法はありませんが、呼吸器使用やガンマグロブリンなどの血液製剤使用を含む、対症療法が行われます。これらは大変つらい治療ですし、その副作用は予防接種のそれとは比較になりません。予防接種の脳炎を怖れ、自然の罹患を怖れないのはナンセンスだといえるでしょう。
また、こういったきびしい治療に必要となる小児科医療者のマンパワーや医療費の問題も考えてみてください。予防接種を受けていれば、そのマンパワーや医療費を、さらにほかの治療や予防医学に向けることができるかもしれないのです。

ご自分のお子さんは健康だから、かかっても大丈夫という考え方も危険です。どうか、自分の子どもが免疫力の弱い小さな子どもに麻疹をうつし、その子が重症化してしまったときのことを想像してください。ここでは、公衆衛生とか、共同体とか、社会生活などという言葉を少しだけ思い出してほしいのです。
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